センチメンタル

十八歳




?」

 ディーノが部屋に戻ると、は窓際で外を見ていた。
 声を掛けると、彼女はゆっくりと、ディーノを振り返る。

「ディーノさん、お疲れ様です」

 ふわりと微笑み、いつものように労りの言葉をくれる。
 しかし、その笑顔はいつもとは少し違うように、ディーノには感じられた。
 卒業して、式やら、同盟ファミリーへの挨拶やらと、ついこの間まで忙しかった。やっと、落ち着いたところだから、その疲れが出ているのだろうかとも思った。しかし、彼女の表情は、疲れているというものとも違っているように思える。
 ディーノは、窓に近づき、振り返ったを腕の中に収める。

「何か、あったか?」
「え?」

 ディーノの問いに、は、彼を、見つめ返した。

が、いつもとは違うように感じたから。最近忙しかったし、無理させてっかなって思ってな」
「何かあったわけじゃないですよ。無理もしてませんし。ただ……」
「ただ?」

 は、ディーノから視線を外し、窓の外を見つめる。
 窓の外は、晴天で、庭も花も咲き始めて華やかな景色を作り始めていた。

「少し寂しいかなって……」
「ホームシックか?」

 式も終わり、の家族は日本に戻った。忙しさが落ち着き、故郷を懐かしく思っても仕方がない。

「とは、ちょっと違います。ずっと、一緒なのが当たり前になってたから、皆とバラバラになっちゃった気がして」
 「日本を離れたのは私の方なんですけどね」と、いいながら、少し寂しそうに笑うを、ディーノは抱きしめた。

「……悔しいな」
「悔しい、ですか?」

 は顔を上げようとしたが、ディーノに抱きしめられていて、上げることはできなかった。

「ああ。俺じゃ、のその寂しさを埋めてやれねーから」
「ディーノさん……」

 は、ディーノの背に、自分の腕を回し、ぎゅっと力を込める。

「いいんです。私が、ディーノさんの傍に居たくて、選らんだんですから」

 ディーノは、そっと、の頭を撫でる。

「来月、時間作って、日本に行こうな」
「……はい」

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