特注品
十九歳
「面白かったですね!」
「そうだな」
絢爛豪華な歌劇場から、並んで出てきたディーノと。
ディーノはタキシードではイブニングドレス。劇場が劇場なだけに、ドレスコードもあったからだ。
今回観たのはが以前から観たいと言っていた演目。念願かなって観れたということで、は若干興奮気味だ。
「あのプリマ・ドンナの方がとっても綺麗でしたよね! 歌声も素敵だったし」
劇場前に待機させていた車に乗ってからも、は先ほどの舞台について話している。
かなり気に入ったらしい。これだけ喜んで貰えると、チケットを入手したディーノとしては、嬉しい限りだ。
「ディーノさん、本当にありがとうございます! 今日の舞台、チケット取るの大変でしたよね?」
「知り合いがちょうどチケットを譲ってくれたから、大変だったってわけでもないぜ」
今回は本当に運がよかったともいえる。が気になってる舞台があると知って、知り合い数人に声をかけてみると、思わぬところからチケットが回ってきた。
特別何かの交渉をしたわけでも、大金を積んだわけでもない。運がよかったのだ。
「それでも、ディーノさんが私が観たいと言ってたのを覚えてくれてたことが嬉しいんです」
ちょっと照れ気味に、そんなに可愛いことを言われると、ディーノとしては、抱き締めたくなる。というか、なったからその欲望のまま抱きしめる。
「そりゃぁ、のことは何でも覚えてるさ」
そういわれ、は少し赤くなり、照れているのを隠すように、舞台の話題へと戻す。
「衣裳もとっても素敵でしたよね。特にプリマ・ドンナがつけてたネックレスがきらきら光って本当に綺麗でした」
プリマ・ドンナがつけていたネックレスがどんなものだったか、ディーノは思い返す。
「……ネックレス、か……」
「ディーノさん?」
考え込み始めたディーノにが不思議そうに声をかける。
「いや、何でもない。どうだ、折角だから、どこかレストランでディナーにするか」
「。プレゼントだ」
「え? どうしたんですか、突然」
読書をしていたに、ディーノは包装された長方形の箱を差し出す。
今日は何かの記念日というわけではない。記念日でなくてもディーノがいろいろ送り物をしてくれることはあるが、このタイミングは珍しい。
しかし、嬉しいことは嬉しいので、素直に受け取る。
「ありがとうございます。開けていいですか?」
「もちろん!」
受けとった箱を開ける。中に入っていたのは、ネックレス。
「これっ!」
ネックレスをみると、は即座にディーノを見た。
「がかなり気に入ってたみたいだったから、作ってもらった。ちょっと時間かかちまったけどな」
中に入ってたのは、この間みた舞台で、プリマ・ドンナがつけてたデザインと同じもの。がかなり気に入ってたようだったから、同じようなデザインのものをディーノがオーダーメイドしたらしい。
はとても嬉しそうで、さっそくつけている。
「ディーノさん、どうです?」
「とっても似合うよ」
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