全てはこの時から始まっていたんだと思う
中学一年
「おー…。ここが並中かー」
正門の前に立ったディーノは、そびえ立つ校舎を見上げた。
「ここに俺の生徒がいるのか。
リボーンの話だと問題児らしいが…」
そう言いながらも校舎を見上げる目はどこか楽しそうな雰囲気を帯びていた。
「じゃ、行くか。ロマーリオ、応接室だったよな?」
「あぁ。でも下調べしてねーから見取り図頼りになるぜ、ボス」
「……まぁ、何とかなるだろ」
ロマーリオの言葉に苦笑いを浮かべながらディーノは学校の敷地内へと足を踏み入れた。
「今日あの3人休みか」
「珍しいね。3人一緒って」
「なんか変なこと首突っ込んでんじゃないの?」
移動教室への道すがら、友人達の会話にが混ざる。
そんな会話をしている3人の脳内には先月のことと、昨日のことが思い描かれた。
詳しい経緯は何も分からないが並盛生連続襲撃事件があった9月には3人と雲雀が黒曜から戻ってきた時、大怪我を負って病院に担ぎ込まれるということがあった。
そして昨日。
補習をサボった彼等に誘われて商店街を歩いていた時、爆発騒ぎに巻き込まれた。
「そう考えると沢田君の周りってホント色んなこと起きてるよね」
「色んなことというか…ありえねぇ」
「おぉっ!」
突然が声を上げた。
「え、何?!」
「ゴメン。プリント忘れたから取ってくる!」
「待ってようか?」
友人の言葉には首を振る。
「いや、先行ってて」
言うが早いか彼女はクルッと方向転換して走りだした。
「応接室って何処だ?」
「見取り図ぱっと見た感じだとこの建物なんだがな」
「ちゃんと見とけよ、ロマーリオ」
「俺の言葉聞き入れなかったのはボスだぜ」
会話をしながら階段を上る大人が二人。
校内に設置されている見取り図をじっくり暗記しようとしたロマーリオを、
学校に懐かしさを感じていたディーノが急かしたのである。
「建物が分かれば後は簡単だって言ったのはボスだぜ」
「悪ぃって!しょうがねーだろ。学校ってやっぱ懐かしいんだ。
それにこの中学思ってたより広かったんだよ」
笑いながら詫びを入れるディーノにロマーリオは軽く溜め息をついた。
「にしても、部外者が入っても何も言われねーんだな。
大丈夫か?この学校」
敷地内に入ってからこっち、すれ違う生徒達が自分たちを見て驚くのは分かるが、
教師達は自分達を見て多少なりとも驚く表情はするが特に質問されることも注意されることもない。
本来の学校なら部外者が校内を歩き回っていたら注意なりなんなりするのが普通だ。
ましてやそれが外国人なら尚更といってもいい。
「さぁなぁ。どっかでリボーンが根回しとかしてるんじゃないか?」
「納得できちまうのが不思議だが、相変わらず謎だらけだな」
「おい、ボス前!」
「へ?」
ドンッ
ロマーリオの声に前を向こうとした瞬間、ディーノの体に衝撃が走った。
「うおっ!」
「いたっ!」
ドサッ
「危ねっ!」
ディーノは思わず階段から落ちそうになったものの反射的に手すりを掴んでそれを凌いだ。
「おい、大丈夫か?嬢ちゃん」
自分のボスの安全を瞬時に確認した後、ロマーリオは階段を登りきった。
「悪い!俺が余所見してたからだ」
ディーノもすぐに階段を登り、ぶつかった生徒に手を差し出す。
「こっちこそ、ごめんなさい。
私も走ってたから…?!」
差し出された手をとり、顔を上げた瞬間は目を見開いた。
(すごっ!かっこいい!)
「どうした?どこか痛むか?」
自分を見て止まっているにディーノは声をかける。
「いや、何でもないです」
はそう言って急いで立ち上がった。
「これ、落としたぜ」
「あぁっ!すみません」
ロマーリオから落とした筆記用具などを受け取り頭を下げる。
「あ。ぶつかっておいてなんだけど、ひとつ教えてくれねーか?」
「…はい?」
突然の申し出には瞬きをひとつ。
「俺はディーノっていうんだが、応接室の場所を探してるんだ」
「…応接室?!」
ディーノの言葉には驚いた声で尋ね返す。
その言葉に今度はディーノが驚いた表情。
「そんな凄いのか?応接室は?」
「いえ…まぁ…」
は小さく答える。
応接室といえば、この並盛中学を支える、寧ろ支配している
風紀委員の頂点に立つ風紀委員長、雲雀恭弥の拠点である。
先程の、部外者が校内に入っても教師達が何も言わないのは偏にその雲雀の発言力あってのもだ。
普段なら、その雲雀恭弥がいの一番に部外者浸入を阻止するところ。
そんな彼の拠点に用事があるとは、とても普通の人とは思えない。
は疑問に思いながらも質問に答える。
「えっと…応接室は4階上がって右です。
奥から二部屋目がそうです」
「そっか。あんがとな。
それと、ぶつかってすまない。
行こうぜ、ロマーリオ」
そういって二人は階段を再び登っていった。
はただそれを見送る。
しかし頭に引っかかっていることが一つ。
(あの人…どこかで見たことある…。
金髪の人なんてあんまり会わないし…しかもあんなカッコイイ人。
……?)
「あっ!」
は小さく声を零した。
(あの時だ!結婚式に行った時にいた人!)
それが分かるとの顔は段々とほころんでいった。
「ディーノさんっていうんだ…」
彼の名前を噛み締めるように呟く。
キーンコーンカーンコーン
そんなの雰囲気を現実に引き戻すように予鈴が校内に鳴り響く。
「うっわ!やばっ!」
自分の用事を思い出して再び教室に向かって走り出した。
「あ!さん間に合った!」
「ギリギリじゃん。なんかあった?」
移動教室先へ戻ってきたを2人が温かく迎える。
「ん、ちょっと」
「ほぉ、それは後で詳しく聞かないと。
まぁ、そんな顔してたら何かないほうがおかしいか」
友人の指摘にの心臓がひと鳴り。
「え?」
「顔、笑ってる」
「嘘!」
「あはは、ホントだ」
もう一人の友人も面白そうに笑っている。
「おーし。お前等ー、授業始めるぞー」
タイミング良く教師が入って来て1時間目の授業が始まった。
「また会えないかなぁ…」
教室内の雑音に掻き消される程小さな声では呟いた。
その言葉が叶うことを彼女はまだ知らない。
ドンッ
「うおっ!」
「いった!」
「悪ぃ!大丈夫か!って…」
「大丈夫です…。あ…」
「この間の!」
「えっと…ディーノさん!」
「ホント悪ぃ。何回もぶつかってるな。怪我、ないか?」
「あ、はい。ありがとう御座います」
「しかし、よくぶつかるな。明らかにボスが悪いが」
「ロマーリオ…。えーっと…名前は?」
「え。です。、」
「か。ちゃんと気をつける。ホント、毎回悪ぃな」
「また、屋上ですか?」
「あぁ。おっと、急がねーと。じゃぁな、!」
「…名前…呼ばれた…。っと、私も部活行かなきゃ!」
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